以前書いた記事(http://kawano-law.net/?p=23)の続きです。

この記事では、著作権法上の重要な考え方であるカラオケ法理についての解説を書かせていただきました。

今回の記事は、この法理の広がりにより、今まで著作権を意識する必要のなかったほかの業界でも、思わぬところで著作権についてのリーガルリスクを生じてしまうという問題です。

1、不動産の活用のあり方の変化

不動産の活用方法といえば、人に貸すくらいだったものですが、最近では、単に場所を貸すだけでなく、様々なサービスも組み合わせて、貸会議室やレンタルオフィスという形で運営することで、付加価値を生み出すという携帯のビジネスが広まってきているようです。

通常の賃貸人と賃借人の関係の場合、賃借人の行為について賃貸人が責任を負うということは考えにくいのですが、このように、賃貸人が賃借人の事業に協力し共同事業に近い形になっていくと、賃貸人もまた、賃借人の行為に責任を負わされるリスクを考慮しなければならなくなってまいります。

2、賃貸人と賃借人という関係性の変化と、著作権

そのリスクの一つとして考えられるのが、著作権侵害リスクです。

先日の記事でご説明したカラオケ法理では、①管理可能性と②営利目的を場所の提供者側が有している場合には、場所の提供者が演奏の主体であるということになるとの判断がされています。

少なくとも賃貸人は不動産の経済的な活用を意図しているでしょうから、②営利目的を有していることになるでしょう。

そうなると、問題は、①管理支配性、すなわち著作物の利用についてどのように関わっていたかになりそうです。

 

3、単なる場所の提供者ではないとされた事例

例えば、先日、ライブハウスの事例ですが、ライブハウス経営者の著作権侵害を認めた事例(東京地判平成28年3月25日)がありました。

この事例では、単に場所を提供するだけでなく、①場所の性質が著作物の利用を想定した施設(ライブハウス)であったこと、②ホームページやチラシなどを置くことで宣伝に協力していたこと、③演奏者も経営に深く関与していること、④収益構造が、場所の使用料としてではなく、入場者からライブハウス側が飲食代やチャージを徴収する形態がとられていたことが考慮されて、ライブハウス経営者も著作権侵害の責任を負うとされました。

 

通常に賃貸人と賃借人の間の関係であれば、これらのような事情を満たすことにはならないので問題はないのでしょうが、特に②については、場合によっては当てはまってしまうこともありえそうです。

不動産の管理者や所有者がどこまで関与すれば著作権侵害の主体となるかは今後の事例の集積が待たれるところですが、少なくとも、ライブハウス以外にも貸劇場、貸シアター、ギャラリ-等を運営する立場であったり、あるいはスペースを貸し出す相手が著作物の利用を想定している場合に、不動産を管理する側としては、著作権法違反のおそれのある形態の営業については、その権利処理については自己責任で行ってもらい、その内容についてまでは関知しない、というスタンスでいた方が安全なように思います。

4、おわりに

このように、実際に最近の判例では、場所を貸していたというだけでなく、演奏行為に実質的に関与していたという評価がされて、著作権侵害の責任を負うことになったという事例が生じています。

ここまで、場所の提供者の立場の責任について、著作権との関係で書いてきましたが、実は、著作権法以外にも、先日興味深い判決がありましたので、次回紹介したいと思います。