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依頼者に喜んでもらって、これは問題だと思ったこと ~実質的に弁護士費用をかけずに、著作権侵害に対処する方法~2020.03.28

弁護士の河野冬樹と申します。
それは、つい先日、ちょうど自分の作品が企業に無断で改変して利用され、困っていらっしゃったクリエイターの方からの依頼が無事解決したときの話でした。
その件では、依頼者の方は、当初は、多少お金がかかってもいいから、とにかく無断利用を止めたい、というご意向だったのですが、比較的侵害が明らかな事案だったし、これまでの侵害の証拠もある事案だったため、これまでに無断使用されていたことに関する損害賠償も請求できることをご説明の上、即座に、弁護士名で警告文を送るとともに、それまでの侵害について、損害賠償も併せて請求するという対応を行っていました。
その件について、先方からは、謝罪し、無断使用部分の全削除をしたうえで、損害賠償50万円を支払うという形で無事解決をみたのですが、問題に気付いたのは、依頼が解決して、清算と、お預かりしていた資料類の返還のために、依頼者の方が事務所にいらっしゃったときのことでした。
「先生、てっきり弁護士に依頼したらもっとお金がかかるものだと思ってましたが、むしろお金が戻ってくるんですね。そうと知っていたら、もっと早く依頼すればよかったです」
依頼者がこうおっしゃるのを聞いて、その時は、事件が無事解決した直後だったこともあり、単純に、喜んでもらえてよかった、と思っていたのですが、後から、この、「もっと早く依頼すればよかった」という言葉が妙に引っかかってまいりました。
まず、こういう解決の形は、証拠がそろっていて、侵害が明らかな事案であれば、特段珍しいものではありません。むしろ、それなりの企業が相手で、にもかかわらず、担当者の無知その他で著作権侵害が行われてしまっているような場合には、一番よくある形の解決といっていいでしょう。
企業の側も、侵害をしたことが明らかなケースであれば、既に弁護士から通知が来てしまっている以上、裁判になることは予見できるわけで、合理的に考えて、裁判までやって争って負けるよりも、素直に侵害を認めて和解してしまったほうが、結果的には、弁護士費用等がかからないし、レピュテーションリスクも少ないので、損は少なくできます。そのため、ある程度ちゃんとした企業が相手方で、侵害が比較的明らかな場合は、交渉で解決することは珍しいことではありません。
またお金の面でも、その際の損害賠償の額50万円も、継続的に侵害されているようなケースでは妥当なところでしたし、他の事件と比べても同じくらいかな、というところでした(もちろん個別の事情によるのですが)。
かつ、特別に僕が弁護士費用を安くしたわけでもありません。僕が差止+損害賠償を請求する際、損害賠償で取れそうな金額が100万円以下の場合、交渉段階で解決する場合は
着手金:11万円
報酬金:侵害がやんだ場合で11万円、それに加え、金銭を得た場合には得た金額の22%(いずれも消費税込み)
でお受けしています。
そうなると、例えば、上記の50万円を獲得した場合でも、弁護士費用は合計で
11万円+11万円+50万円×22%=33万円
になりますそのため、
50万円―33万円=17万円
で、少なくとも泣き寝入りするよりは経済的にも17万円得ている形になっていますし、計算上は、50万までいかなくとも、相手から30万取れれば持ち出しにはならない。
だからこそ、元々侵害をやめさせるだけのつもりで依頼に来られていた依頼者の方は、「お金が戻ってくる」という言い方をしたし、それに加え、侵害をした相手にはちゃんと筋を通させたうえ、その後の侵害もやめさせることができた、という形なわけで、確かに、「そうと知っていたら」何もしない理由はありません。
裏を返せば、①それなりの企業が相手方とわかっていて、②ある程度侵害の証拠もそろっていて、③侵害が継続的に行われているケースであるにもかかわらず、現にこの依頼者の方がご依頼をためらう理由はなかったはずで、同じような状況で、こういう損害賠償の相場や弁護士費用の基準が「知られていない」ことから、相談することすらためらわれ、泣き寝入りをする形になっている方は結構いらっしゃるのではないか、と思ったわけです。
そして、もっと言ってしまえば、その結果、企業の側も、どうせ著作権侵害やったところでばれないし、ばれても所詮金銭まで請求してくることはまずないから、このくらいは大丈夫、という、ある意味で「合理的な判断」のもと、半ば確信犯的に著作権侵害が行われたり、そこまでいかなくとも、軽い気持ちで無断使用が行われてしまう例が後を絶たない。
そうだとすれば、このような状態こそが、由々しき問題ではないのか。そう考えると、単純に、喜んでもらえてよかった、とも言っていられないのかと思うようになりました。
そこで、まずはまったくの私個人で行う取り組みとなりますが、新年度を迎えるにあたりまして、決意を新たに、この問題に本格的に取り組んでいきたいと思います。
そのための方策はいくつか考えているのですが、まずは第一弾として、主に、著作権侵害を受けているクリエイターの方からのお問い合わせを想定して、無料で、オンライン上でご相談ができる仕組みを導入したいと思います。
このページの下に、「Web相談フォームはこちら」というボタンがありますので、そこに、必要事項と、現在の状況を記入いただき、送信いただければ、弁護士より、弁護士費用も含め、簡易な見通しを返信させていただきます。
自分の作品が不本意な使われ方をしている、という方は、一度、お問い合わせをいただければと存じます。
※注意事項
・お問い合わせをいただいた後、返信までに少々時間を要する場合がございます。
・フォームには、侵害がされている状況、および、相手方との関係を、わかる範囲でなるべく詳細にご記載ください。
・返信は、あくまでもご記載いただいた情報に基づくものであり、その通りの結果が得られることを保証するものではありません。また、実際にお話を伺って、見通しが変わる場合がございます。
※4/13追記
コロナウイルスの影響により、イベントの中止等が生じた際の報酬不払いに関するご相談を相次いでいただいております。
(詳細は下記のリンクをご覧ください)
「できない」と「意味がない」は違う~緊急事態宣言に起因する不当な報酬不払いについて~
そのため、報酬不払いについても同様にWebフォームにてご相談をお受けすることといたしました。
もし、イベントの中止を理由として、報酬が減額されたり、あるいはまったく支払われなくなった、という方がいらっしゃいましたら、一度、お問い合わせをいただければと存じます。